クロアロでアニメT期ラストをやってみた




 少しだけ淋しそうにアロイスは目を伏せた。瞼を縁取る蜜色の睫毛が血の気の引いた白い頬に薄く影を落とす。だがそれも一瞬のことで、少年はすぐに顔を上げて金色に光る執事の目をまっすぐに見据えた。そして今にも泣き出しそうに歪んだ顔で最後の命令を口にする。
「もう十分だ。これ以上やってもお前に益はないだろ? やるなら痛くしろよ。絶対に消えない傷を俺に刻め」
「………………」
 だが執事は答えない。ただ無言のまま、じっと主の目を見ている。その金色の壁の向こうにはやはり自分の願いは届かないのだろうか。
「あは、主が執事に命じることじゃないね。お前は俺の“執事”だもんな。役割に沿わぬ命には従わない。大したもんだよクロード。その徹底ぶりをもっと早くシエルの執事に見せてやればよかったのにさ!」
 ははは、あはははは!
 歪んだ顔で笑う声はけれど次第に小さくなっていき、彼が執事の足元にくずおれた時、その声は既に嗚咽に近いものになっていた。
「ねえクロードお願いだよ。失くさないものが欲しいんだ。お願いだから……ッ」
 こらえきれず溢れて頬を伝う涙を、屈み込んだ執事が手袋をはめた指で丁寧に拭う。その手つきの優しさとは裏腹に眼鏡の向こうの金の目は至って冷静な光を放つばかりで、その落差にアロイスの胸はぎゅうと締め付けられるのを感じた。これで泣きやむことなどできよう筈もない。嗚咽はますます高くなり、少年は力なく執事の厚い胸に取り縋った。しっかりとした腕に閉じ込められて尚も泣き続ける彼の視界はゼロ。
 ゆえに、嗚咽に震える小さな頭を愛撫する黒ずくめの執事の唇が歪んだ笑みを形作っていることなど、幼い主には知る由もないのだった。


 悲恋? いいえこれでも両想いエンドのつもりです←
 クロードは攻めていくSだとタブロイドで読んだのでわかりやすいドSをめざした結果がこれだよ!
 それにしてもT期最終話はやっぱり美しい終わり方だったなぁとしみじみ感じます。寂寥感と満足感の融合なんてそうそう経験できることじゃない。