過去の未来 時の逆行5




どれぐらいそうしていただろう…

 

耳に聞こえるざわざわとした音でジェイドはうっすらと目を開けた
そこに写るのは暗い空とたくさんの懐中電灯の光…人の気配

ジェイド「私は…一体…」

体を起こそうとしてようやく気付いた

ジェイド「ネビリム…先生?」

自分の上で気を失っているネビリムの姿。死んではいない…
無意識にネビリムを抱きかかえる…
そんな時集団の中から何人か飛び出してきた

教員A「カーティス先生!何があったんですか!?」
ジェイド「ジェイドの譜術暴走です…彼はあそこで倒れていますからネビリム先生の屋敷に連れてきてください。大丈夫です。死んではいません」

何故言い切れるのか
自分が死んでないからだ
状況を知らぬ者にはそれほど意味不明な言葉はない。ジェイドは黙ってネビリムを抱えて歩いていった
途中少年に会った。この事件を知らせてくれたピオニーという者…心配そうにこちらを見た
少しの笑みを浮かべると安心した様子で子ジェイドの元へ駆けていった

 

一足先に屋敷に着いたジェイドはネビリムを医務室らしきところのベッドに横たわらせた
脈拍、呼吸、その他に異常がないことを確認するとジェイドは一息ついた

ジェイド「まったく…無茶な事をする…ですが助かりましたよ」

だが、安心してばかりはいられない
子ジェイドはおそらく生きている…というレベルで確信はない。自分の存在もいつ消えてもおかしくはない…
もしジェイドの存在が消えたなら…この人は悲しむのだろうか…
ネビリム先生に悲しい顔はしてほしくない…

―『私は先生の事が…』―

外の様子が騒がしくなった
医務室を出ると教員が駆け寄ってくる
教員A「カーティス先生、ジェイドはどうやら無事のようです…ネビリム先生は?」
ジェイド「気を失っていますが怪我もなく命に別状はありません…ですが安静にしておくのがいいでしょう…部屋には入らないでください」
教員A「わかりました。ではジェイドの部屋へ…」

 

連れてこられたのは子ジェイドのいる部屋…ジェイドがきた時には既にベッドに座っていた
中にいた教員に外へ出てもらい二人のジェイドだけになった

ジェイド「目が覚めたようですね…」
子ジェイド「………」

無言で俯いたままの子ジェイドにジェイドは歩みよった
パァン!
子ジェイドの頬を殴る音が部屋に響きわたった

ジェイド「あなたの事は知っています…大人顔負けの知識や譜術から周りを見下していたあなたを変えてくれたのはネビリム先生だった…ネビリム先生に憧れ、まずは先生に使えて自分には使えない第七音素を手に入れたいと考えたのでしょう?先生に認められるために…」

子ジェイドは黙ったままジェイドを睨みつけた…当たっている…反論できない…
逆にジェイドもわかりきっている質問は極力控えるようにした
自分の事は自分が一番よくわかっている…問い掛けても話しそうにないなら質問するだけ無駄…

ジェイド「好奇心から実験をするのはいい事ですが人を巻き込んではいけません…わかりましたね?」

よくある忠告をした。おそらく自分が子ジェイドの立場だったら納得の行かない台詞だろう
結果として人を巻き込んだだけで元々こうなるとは知らなかったのだから…

子ジェイド「…わかった風な口を聞かないでください…」

ついに子ジェイドが重い口を開いた

子ジェイド「本当にネビリム先生を殺してしまっていたら…あなたは私を赦してくれましたか…?」

その質問の意味をわかって言っているのか…

ジェイド「私に赦しをこいますか?その場合謝る相手はいないと思いますよ」

過去の自分の失態をいうような気がした…
少しの沈黙が流れ子ジェイドが再び口を開いた

子ジェイド「なら何故もっと叱ってくれないんですか…?」

自分もその時叱ってほしかったのだろう…叱ってくれる人を殺したあの時…

ジェイド「私は…過去に二度も愚かな研究でたくさんの大切な人を傷つけ…殺してしまったのですよ…私にもあなたを叱る権利がありません…」


今度はVSじゃなくジェイドと子ジェイド!
この小説を読んで改めて、ネビリム亡き後ジェイドを本気で叱ってくれる大人はいなかったんだろうなぁとしみじみ思いました。
何でも知っている、何でも理解してしまう天才に見える子ジェイドがまだ十を僅かに出たばかりの子供だったことを当時本当にわかっていたのはしぇんしぇいだけだったのかもしれません。
1つの危機を何とか回避したジェイド。このあと彼は過去の世界で何をなすんでしょうか。
こんな素晴らしいお話を頂けるとか無上の幸せですよハニー!
いつもありがとうございますー!!